会長挨拶
このたびJAICOWS会長を務めることになりました、甲南大学の井野瀬久美惠と申します。
「はじめまして」の方も、「お久しぶり!」という皆さんも、どうかよろしくお願いいたします。
専門は英国近代史・大英帝国史で、奴隷制度や植民地主義をめぐる「過去と現在との対話」にジェンダー視点を盛り込む
仕事をしてきました。日本学術会議では、第21期(2008〜2011年)に連携会員、第22期(2011〜14年)から会員、そして第23期(2014〜17年)には副会長を務めました。専門領域以外に、広く学術全体のジェンダー平等を考える必要性、分野を超えた議論の重要性を痛感したのも、3年間の副会長経験を通じてであり、同時期に委員長を務めた男女共同参画委員会で出会った異分野の研究者、行政関係者に刺激されてのことでした。現在は連携会員として活動しています。
学術会議は現在「改革」を模索中ですが、その歴史を紐解けば、抜本的な改革が試行錯誤された議論の現場に常に女性研究者がいたことが見えてきます。学術会議法の一部改正が行われた第12期(1981-85)には、初の女性会員である猿橋勝子先生がいらっしゃいました。会員選考をはじめ、学術会議の仕組みが大きく変わる改革の戸張口に立った第17期(1997-2000)には、原ひろ子先生がおられました。詳しくは拙稿「日本学術会議改革と女性会員」(『学術の動向』2021年9月号)をご覧ください。
JAICOWSは、この2つの時期の間、第16期(1994-1997)の女性会員がわずか一人になることが判明した危機のなかで結成されました。それから20年余りの時間が過ぎ、何が解決され、さらにどんな課題に向き合うべきか、検証する時期にきています。JAICOWSをめぐる「現在と過去の対話」の輪を広げながら、学術の未来を支える若手研究者のために何かできることはないか、探ってみたいと思います。
皆様、どうかお力添えをよろしくお願いいたします。