【メッセージ】今後の活動に関するJAICOWS会長からの提案

今後の活動に関するJAICOWS会長からの提案

女性科学研究者の改善に向けて、特に若手研究者、非常勤研究者の地位の改善に向けて、今回2つのご提案・ご連絡をさせていただきたいと存じます。

1<「学術の再生産」が危ない!>シンポジウム、2017年9月18日(月:敬老の日)

青山学院大学総研ビル12階、大会議室 13:00-16:30

一つ目は、女性研究者の非正規化の現状と、その非正規化の問題点を問うシンポジウムのご案内です。今、研究者、学芸員、司書、非常勤講師など、学術関連専門職の非正規化が進んでいます。こうした専門職の方々の待遇改善なしに、『学術の再生産』は可能なのか?!それを問うシンポジウムが、学術会議の社会学委員会ジェンダー分科会の主催で開かれ、JAICOWSも協力参加させていただきます。

プログラムは以下の通りです。(ポスター参照)

13:00~13:10  海妻径子(岩手大学):趣旨説明

13:10~15:00 報告

河野銀子(山形大学/日本学術会議社会学委員会ジェンダー分科会会員):

女性研究者はどこにいるのかージェンダー統計の現状と限界を探る

廣森直子(青森県立保健大学):非正規化のすすむ図書館職場で専門性は保てるか

ー専門職の非正規化が女性によって受け入れられている現状を考える

清末愛砂(室蘭工業大学):

「女性研究者支援」事業は誰のためにあるのかー研究者の消費と搾取構造を考える

羽場久美子(青山学院大学/日本学術会議会員、JAICOWS(女性科学研究者の環境改善に関する懇談会)会長:女性研究者の貧困をどう解決するか?

15:15~16:30 質疑応答・討論

現在、シングルマザーや子供の貧困が問われる中、何より女性研究者の貧困と不安定化が、学術の再生産を危うくしている!という点に警鐘を鳴らしていきたいというシンポです。

敬老の日です。ぜひ多くの方のご参加およびフロアからの積極的なご発言、ご提言を、どうぞよろしくお願いいたします!ありがとうございます。

2<国際ジェンダーの会のさまざまな試み>

二つ目は、国際ジェンダーの会の報告によって、日本でも、PhD論文のAwardや女性研究者の著書へのAwardまた若手女性研究者に対して学会の機関を通じて、論文の書き方、大学就職のKnow How、女性研究者故の問題や悩みへの対処などサポート体制の試みがなされていけばよいのではないか、という情報共有のご提案です。

現在、アメリカに本部のある7000人を超えるメンバーを数える世界国際関係学会(ISA)の副会長(2016-17)を務めており、その中のWomen’s Caucusの執行委員をしております。Women’s Caucus International Studies(WCIS)では、毎年、世界中の女性研究者のPhD論文(英語)、およびジェンダー研究の著書(英語)でその年最高の成果を決定しAwardを授けるシステムを取っており、毎年執行委員は夏に大量の論文・著書を読み、その年最高のPhD論文、ないし著書を書いた女性研究者を選び、賞を与えて優れた研究を称え、奨励しています。また昨年から学会の際に、通常の分科会とは別にTown Hall Meetingを開き、集まった女性の若手研究者に対して、PhD論文の書き方、大学で職を得るために、学会報告の仕方、などを執行委員と有志によりラウンドテーブル形式で共同ディスカッションする場を設けて成功しており、特に若手女性研究者に大変感謝されています。今年は年次大会の2月にワシントン郊外のバルティモアで、その後6月にはISAの香港大会で、同様の会合を開き、評価を得ました。

特に香港ではアジアで国際政治を学ぶ女性PhD研究者に対して、PhD取得後の大学での就職について、アジアの女性国際政治研究者のネットワーク形成について、女性研究者の地位の向上について相互にディスカッションし大変有益でした。帰国してからもメールで相談を受けています。

日本でも、女性研究者に特化したPhD論文や著書のAward,また若手女性研究者の育成のため、問題点を集め解決に向け支援するような体制を、各学会の中で作っていければ、孤立しがちな女性研究者にとって力になるのでは、と思い情報を共有させていただきました。女性研究者、中でも若手研究者は現在でもなかなか正規の職を得るのが困難であり、また任期付きの職が特に若手の間で、准教授さらに教授職にまで広がりつつあります。後人を育成していくという点でも、また、非正規に苦しむ女性研究者が増えているという点でも、JAICOWSもこのような問題にも取り組んでいきたいと思っております。

ぜひ皆様のご協力とご理解をお願いいたします。

皆様どうぞ充実した夏をお過ごしください。

JAICOWS会長 羽場 久美子